眠れない夜に寄り添ってくれる本 『白河夜船』吉本ばなな
★★★★★
友達を亡くし、意識不明の妻を持つ男性と恋をする主人公の、疲弊した心に光が射していく様を描く表題作と他2篇。
3篇とも眠りがテーマになっている。
ブログ最初の記事ということで、まだ手探りなので馴染み深い本を選んだ。これは私が一番繰り返し読んできた本。一番好きな本は何かと聞かれたら本当に悩ましいのだけれど、なんだかんだでこの本を選んでしまう気がする。
疲れた時やイライラした時に読むと、心がしんとなり、読後に小さな灯りが灯る、そんな本。
静かな白い夜の果て
初めて読んだのはまだ10代で、「白河夜船」という言葉を知らず、著者が作った言葉だと思っていた。本の中身と題名のイメージがこの上なくしっくりきたのだ。
ほの白い夜の静かな川に小さな船が浮かんでいる。真夜中の闇ではなく、夜が終わろうとしている「夜の果て」の静寂に、孤独な船が小さい波紋をたてながらすーっと進んでいく。
そのイメージは、私が持っている眠りの風景そのものでもあった。
眠ることは人が孤独であることを浮かび上がらせる。私たちは他の誰とも眠りを共有することはできない。そしてそのことは、起きていても実際は孤独であることや永遠の眠りを連想させる。
船はただ一艘のみ。辺りは静寂に満ち満ちている。
そんな絶望的な孤独感を感じて眠れない夜、読んでみて欲しい。心がふっと軽くなり、穏やかな気持ちで眠りにつけるはず。
心に残った1文
『この世にあるすべての眠りが、等しく安らかでありますように。』